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2016年01月23日

軽井沢バス、生き残った者は記憶なし

長野県軽井沢町で15人が死亡したスキーバスの転落事故は、乗員・乗客41人のうち15人が死亡。バス事故としては平成に入って以降、最悪の被害となった。産経新聞の取材に応じた生存者の言葉からは事故の衝撃と、「なぜ自分だけが生き残ってしまったのか」という自責の念が浮かぶ。事故発生から1週間が経過し、事故原因の解明は進んでいるが、生存者たちの心の傷が癒えることはない。

■現実に気づいた瞬間、聞こえた「うめき声」

 「気がついたら森の中にいた」。

 バス事故で最後尾の座席に座っていた男子大学生(21)は、事故の瞬間をまったく記憶していない。気がついたら、森に倒れていた。近くにいた人から「携帯を持っていますか」と聞かれ、ポケットから携帯を取り出したのが最初の記憶だ。「なぜ電話が必要なのか、と思った」

 その人は119番に電話をし始め、事故が起きたと気づいた。ふと現実に気づくと、うめき声が周りから聞こえてきた。「ドラマでも見ないような光景。最初は寒かったが、興奮してきたのか寒くなくなってきた」と振り返る。

 同じ大学の友達5人と来ていて、ほかの3人とは事故当時に「大丈夫か、大丈夫か?」と声を掛け合っていたが、土の上に横たわっていた田原寛さん(19)からは返事がなかった。正式に田原さんの死を聞いたのは、事故発生から10時間以上が経過した後だった。

■「運転がおかしい」…次の瞬間記憶なし

 この男子大学生同様、生き残った乗客は口々に事故が起きた瞬間について「記憶にない」と話しており、事故の衝撃がうかがい知れる。

 別の男子大学生(22)は、カーブでブレーキを使っておらず、「このスピードで大丈夫かな」と思ったという。左側の席に座っていたにも関わらず、右車線側のガードレールが見えて、「おかしい」と気付いた次の瞬間に強い衝撃を感じ、後は記憶がない。

 「気付いたら、自分はバスの車内にはいたけれど、真っ暗な目の前がふさがれたような暗闇で、何も見えなかった」と振り返る。

 女子大学生(19)も同様に事故のそのときを覚えていない。

 山道のカーブもすごい勢いで曲がっていたので、「運転が荒いね」と友人と目配せし合っていたが、2回目の急カーブでカーブとは逆方向に思いっきり体が引っ張られ、ガタガタと舗装された道路ではないところを走っているような感覚があった。女性の「キャー」という叫び声が聞こえたが、そこから記憶がない。

 気がついたら、外に倒れ、土の上に横たわっていて隣にバスが見えた。「どうやってバスから外に出てしまったのかも記憶がない」。隣の座席にいて目配せしあっていた友人、池田衣里さん(19)は帰らぬ人となった。

■ギアはニュートラル、事故は人為的ミスの可能性

 被害者のうち、乗員2人を除いた13人は全員が大学生。16日から大学入試センター試験が始まるため大学で授業がなかった事情もあり、乗客39人のうち32人は大学生だった。ゼミ仲間やクラスメートなど気心の知れたグループで参加した人が多かった。

 これまでの長野県警の調べによると、事故車両の運行記録計(タコグラフ)の記録紙を確認した結果、事故直前の速度は時速80キロ前後で、制限速度の50キロを大きく上回っている。

 監視カメラの映像などによると、土屋広運転手(65)=死亡=のバスは現場から約1キロ手前で下り坂に入った時点では比較的ゆっくり走行していたが、約250メートル手前でかなりのスピードでセンターラインをはみ出しながら左カーブを曲がり、約100メートル地点の右カーブでガードレールに軽く接触、続く左カーブで崖下に転落した。

 この際、ギアはニュートラルに入っていたことが判明。ニュートラルではエンジンブレーキが利かないことから、現場の下り坂でフットブレーキで減速しきれず制御不能に陥った可能性がある。

■「どうしてオレが生きているのか」…消えぬ苦悩

 人為的な操作ミスだった可能性が浮上する中、生存者たちはやりきれない思いと、苦悩を抱える。

 冒頭の男子大学生は「自分に何かできることはあったんじゃないか、声を掛けるだけじゃなくて、多少動けたんだから助けられたんじゃないか、とか悔やんでいる」と話す。

 そしてこう自問する。「どうしてオレが生きて、向こうが死んだんだろう。前まではそういう事故があっても気の毒なひとごとだったが、まさか自分に降りかかるとは思わなかった。なにが生死を分けたのか、本当にわからない」。

 長野県佐久市の病院の院長によると、事故現場から搬送された東京都内の男子大学生は退院を勧めた際に「車には乗りたくない」と強く主張し、新幹線に乗れるようになるまで退院を延期したいと希望した。この学生は通常の会話の途中ですぐ目を伏せたり、言葉が続かなかったりと精神的ショックが続いている様子だという。

 関係者によると、災害や事故から難を逃れた人が、生き残った自分を責めてしまう「サバイバーズ・ギルト」(生存者の罪悪感)と呼ばれる感情を抱くケースがあるという。

 捜査関係者は、「今回は運転手が死亡していることから、怒りの矛先をどこに持っていっていいかわからず、矛先が自分に向きやすいかもしれない。今後は生き残った人たちへの精神的ケアが急務だ」と話している。
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タグ:軽井沢バス
posted by ししまる at 19:47 | 東京 ☀ | Comment(0) | yahooトップニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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