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2016年01月21日

戦後から5年、初めてコーラを飲んだ日本人

これがアメリカだ――。はじめてコカ・コーラを飲んだとき、そう強く感じたのを鮮明に憶えています。

あれは確か高校生になったばかりだったから、終戦から5年目ということになります。僕の父はとっても新しいもの好きで、珍しいものがあると真っ先に買う人でした。その日も帰宅した父が不思議な色の液体が入った瓶を持っていた。それがはじめてのコカ・コーラです。家族揃ってコップに注いで少しずつ飲んだと思います。とても珍しいものでしたから、一気にラッパ飲みなんてとてもできなかったはずです。

正直にいえば、飲んだ瞬間から好きになったわけではありません。これまで親しんできた日本のお茶には渋味があるのですが、コカ・コーラはそれがまったくない。辛いというのとも違うけど、どこかきつい感じがしたのです。とくに炭酸のスカッとしている感じは、それまでに体験したことのない刺激でした。あのさわやかな感じに、アメリカを感じたのでしょう。

意外に思うかも知れませんが、当時の僕は野球部に所属する野球少年で、しかも同時に美術部にも籍を置いていました。そして一方では小説家を目指し、小説も書いている。なんとも節操がないというか、夢多き青年だったのです。

しかし、多くの青春の夢は現実の前にもろくも挫折するもので、僕の場合も例外ではありませんでした。野球からいえば、小・中学校ではレギュラーでしたが高校では補欠。美術は一年後に入ってきた新入部員の作品を見て「これが芸術であり、僕のものは芸術もどきだ」と思い知らされました。

残る作家への道については早稲田大学文学部に入れたものの、当時華々しくデビューした石原慎太郎の『太陽の季節』と大江健三郎の『飼育』を読んで、完全に打ちのめされました。あんな斬新で新鮮な文章は到底自分には書けない。少し前、同人誌の先輩が「努力とは文才がある人間ががんばることをいう。君らの場合は努力ではなく徒労だ」といわれたことがありましたが、その言葉の意味がわかった気がしました。つまり、僕の青春時代は、コカ・コーラのようにスカッとさわやかとはほど遠い、挫折の連続だったのです。
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タグ:コーラ
posted by ししまる at 16:13 | 東京 ☀ | Comment(0) | yahooトップニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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